利上げ打ち止め!?今後のNZドルの行方は?
更新日:2023年5月26日
(ニュージーランドヘラルド / 2023年5月24日)
昨日、ニュージーランド準備銀行は政策金利を0.25%引き上げ、5.50%にすることを発表しました。
引上げ幅は事前に予想されていた通りでしたが、オア総裁が”利上げの打ち止め”を示唆したことは市場を驚かせました。
オア発言は、なぜサプライズとなったのでしょうか。
インフレ率はピーク(7.3%)から下落していますが、依然、高止まり(6.7%)しています。
また、以下2つの要因によって今後インフレ率を押し上げる可能性があると市場は警戒していました。
①来年度の政府予算による多額の支出
②急増している移民による消費需要
この状況で物価高を抑え込むには、もう一段の利上げは必要で、
「政策金利を6%まで上げる必要もある」
というかなり"タカ派"な声もありました。
それに対しオア総裁は、
「利上げは今回(5.25%→5.50%)でもう十分」
と”ハト派”とも受け取れる発言をしたわけです。
市場予想と異なった先行き見通しが示されたことで、NZドルは急落。
NZ株式指数は下落基調から反転し、+0.23%で昨日の取引を終えました。
しかし、なぜ今、利上げの打ち止めとも取れる発言をしたのでしょうか。
オア総裁は政府の財政支出と移民の増加について、市場とは異なった考えを持っていました。
(財政支出)
今後数年で考えるとインフレに与える影響は限定的で、また深刻な不景気に陥ることを防ぐ効果もある。
(移民の増加)
労働力不足を補うことで賃金上昇を抑える効果があるため、インフレの抑制も期待できる。
これまでの利上げによりローン利率が上がり住宅需要は減退しています。
中央銀行の懸念材料の1つであった住宅価格の高騰もかなり修正されました。
オア総裁とすれば利上げ効果は確認できており、必要以上の引締めは得策ではないとしたのかもしれません。
ただ、気になるのは今後の金利がどうなるのかです。
当面は、今の金利水準が維持され、先行きは経済データ次第といったことになりそうです。
現在の経済状況はというと、労働市場はまだ強い状態です。
しかし求人数は前月比で今年初めて減少(前年同期比では-16%)し、ほころびが見え始めています。
(Stuff / 2023年5月22日)
個人消費と相関関係が深い消費者信頼度数は79.3(100が景気の楽観と悲観を分ける)と低水準。
また、1年後の経済状況は現在と比べて悪化すると予想する企業は約8割にものぼるなど、企業の景況感も悪くなっています。
景気がこのまま減速していけば、オア総裁の目論見通り金利を上げる必要性はなくなるでしょう。
しかし、仮にインフレ率が上昇に転じたり、景気が再び強くなり低失業率が続けば、金利を再度引き上げる可能性があります。
現時点で金利や経済の先行きをあれこれ予測しても仕方ないかもしれません。
しかし、金利がピーク(またはピーク近く)に達した可能性は高く、人々の関心はすでに将来の利下げ時期に移っています。
来年利下げが行われればと3年前から始まったNZドルの上昇トレンドは終わり、逆に円の上昇トレンドが始まります。
また、仮に日銀が緩和から引締めへ舵を切れば円高はさらに強化されるでしょう。
円高NZドル安になると、旅行や留学などでニュージーランドを訪れる人には朗報となります。
一方、現地で預金する人にとっては今年は高い利息を享受できますが、利下げがあれば預金金利は引き下げられていきます。
インフレ率(7月19日)や失業率(8月2日)など、今後の経済データは注目です。
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